【管理栄養士が伝授!】葉酸の効果・効能って?
1.はじめに
葉酸はビタミンB群のひとつで、生きていくうえで欠かすことのできない栄養素です。
誰にとっても重要な働きを担っていますが、とくに妊娠初期には葉酸の摂取不足が赤ちゃんの奇形のリスクにもなり得るため、積極的な摂取が必要です。
身体でどんな働きをし、そのような影響をおよぼす栄養素なのか、詳しく見ていきましょう。
2.葉酸のはたらきと身体に与える影響
葉酸はアミノ酸や核酸の合成に関わっています。
アミノ酸はたんぱく質の構成成分で、筋肉や血管、肌、髪の毛、血液、ホルモンなど、生きるうえで欠かせない細胞を作る成分です。
核酸は新しい細胞ができるときに必須の成分で、遺伝子情報を作り伝える場所として重要な働きを担います。
これらの働きから、葉酸は次のような働きをします。
●巨赤芽球性貧血の予防
巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)は、「悪性貧血」とも呼ばれています。
かつては、原因がわからず治療法が見つからなかったためにそう呼ばれていましたが、今では葉酸とビタミンB12の不足を補うことで予防・改善ができることがわかっています。
赤血球は血液成分のひとつで、酸素や栄養素を運ぶ働きがあります。
赤血球の細胞を作る葉酸が不足すると、正常に生成されず、巨大化した赤血球(巨赤芽球)が作られてしまいます。
すると、酸素や栄養素が全身の細胞にうまく運ばれず、貧血の症状が出ることがあります。
●赤ちゃんの正常な発育
赤ちゃんが発育するときには新たな細胞の合成が著しく行われています。
そのため、妊娠中や授乳中は葉酸の必要量が増大します。
とくに、妊娠初期の葉酸摂取は重要です。
脳や脊髄などの中枢神経系の器官のもととなる「神経管」が作られる時期で、この時期に葉酸が不足すると、赤ちゃんの神経管に異常が生じる「神経管閉鎖症(しんけいかんへいさしょう)」を起こすリスクが高くなります。
神経管閉鎖症は二分脊椎症(にぶんせきついしょう)と無脳症(むのうしょう)に分かれます。

●二分脊椎症
脊柱の神経に異常が起こります。二分脊椎症の症状には個人差があり、日常生活にわずかな支障が生じるものから自立運動が難しいほどの運動障害まで、さまざまです。

●無脳症
神経管のうち、脳になる部分に異常が起こります。大脳や小脳が小さくなる、もしくは作られず、無脳症を引き起こすと死産・流産する確率が高くなります。
もし産むことができても、大脳や小脳がない状態で生まれてくるため、その後の生存率は低く、数日以内に死亡してしまうことがほとんどです。
神経管閉鎖症の原因は葉酸不足だけではありません。そ
れでも葉酸の摂取によってリスクを下げることができるため、厚生労働省では、2000年より妊娠を計画している時期(妊娠1ヶ月以上前)~妊娠3ヶ月までの女性に対して、サプリメントで葉酸を補うことを推奨しています。
●血管の健康を保つ
体内には多様なアミノ酸が存在し、働いています。
葉酸はそのうちの「ホモシステイン」から「メチオニン」を合成するのを助けています。
葉酸が不足すると、メチオニンに変わることができないホモシステインが体内に増加します。
過剰なホモシステインは血管を硬くしてしまいます。
3.葉酸はどのくらい摂るべき?
日本人の適切な栄養摂取量を示した「食事摂取基準(2015年度版)」によると、成人男女の食事から摂るべき葉酸摂取推奨量は240μgです。
これに加えて、妊娠中は240μg(合計480μg)、授乳中は100μg(合計340μg)摂ることが推奨されています。
また、先にも述べたように、赤ちゃんの神経管閉鎖症予防のために、妊娠を計画している時期(妊娠1ヶ月以上前)~妊娠3ヶ月までの女性は、食事に加えてサプリメントで400μg補うことが推奨されています。

●葉酸の1日の摂取推奨量
・成人男女/240μg
・妊娠中/240μg(合計480μg)
・授乳中/100μg(合計340μg)
・妊娠を計画している時期(妊娠1ヶ月以上前)~妊娠3ヶ月までの女性/400μg(合計640μg)
一方で、過剰摂取にも注意が必要です。
葉酸は水溶性ビタミンのため、過剰に摂っても不要な分は尿として排出されます。
しかし、サプリメントなどで一時的に多くの葉酸を摂ることで身体に悪影響を及ぼす可能性があります。
サプリメントでの許容上限値は900~1000μgですから、過剰摂取にならないよう、用法用量を守って活用しましょう。
4.最後に
最新の国民栄養調査によると、葉酸摂取量は成人男女とも推奨量を上回っています。
しかし、これはあくまでも平均値です。
葉酸は、ホウレン草や春菊、モロヘイヤ、ブロッコリー、枝豆など緑色の野菜に多く、そのほかは、いちご、みかん、キウイなどの果物、納豆などに含まれます。
毎日の食事で野菜や果物が不足しがちな方は葉酸も不足しがちです。
ぜひ、意識して葉酸を摂取しましょう。
※この記事を執筆いただいた専門家の方 執筆:管理栄養士 山本ともよ ヘルスケアに関するサービス、マーケティング支援やコンテンツ発信などを事業として展開。医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士などの専門家により、 医療・健康に関連する情報について、信頼性を確認・検証するサービスを提供している。 ※執筆内容についてはあくまで一般論に関してであり、具体的症状についての説明や診断を行うものではありません。また、執筆者は本サイト上またはリンク先等におけるいかなる個別商品、特定商品の効果保証、購入推薦・推奨などをするものではありません。
株式会社とらうべ所属
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山本ともよ

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この記事の執筆監修者の保有資格・企画 : 管理栄養士(121)
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