加齢に負けない!筋肉量アップの効果を高めるために摂りたい「ロイシン」
健康のために運動をしている方の中には、筋肉量の維持・増進を目標にしている方も多いでしょう。
そんな方に知っていただきたいのが、一緒に行う栄養補給についてです。
なかでもアミノ酸であるロイシンには、運動の効果を高める作用があります。ロイシンについて詳しく解説していきます。
1.加齢と筋肉量の関係
筋肉量は成人では体重の約40%を占めています。しかし、その割合は20~30代でピークを迎えた後、40歳ころから年に0.5%ずつ減少していきます。
そして、65歳以降にはさらに減少率が増大することがわかっています。
運動習慣がない、生活の中で身体を動かす機会が少ない、栄養バランスが乱れているなどの要因があれば、前述の年齢よりも早く筋肉量は減少してしまいます。
筋肉量が減少すると、歩く・立つなど日常生活に必要な動作に不自由が生じることは想像ができると思います。動きがゆっくりになったり、足が上がらないなどの理由から、転倒しやすく、骨折することも多くなります。
ここまで顕著な筋肉量の減少がなくても、中高年代になると、筋肉量は低下し始めていますから、次のような不調が現れるようになります。
- ひざ関節痛が起こりやすくなる
- 基礎代謝が落ち、太りやすくなる
- 疲れやすくなる
- 持久力が落ちる
- 姿勢が悪くなる
- しわが増える
- 尿漏れしやすくなる
加齢に逆らうことはできませんが、運動習慣をつけ、栄養バランスの良い食事をすることで、年齢に関わらず筋力を維持することができることもわかっています。
ですから、加齢にともない、筋力維持に対する取りくみを積極的に行うことが大切になるのです。
2.ロイシンとは
アミノ酸は、筋肉や皮膚、内臓などの組織やホルモンを作るのに働くたんぱく質の構成成分です。アミノ酸のうち、ヒトが体内で作ることができないアミノ酸を必須アミノ酸といいます。必須アミノ酸は外から補うことが必要です。
ロイシンは必須アミノ酸のひとつで、分岐鎖アミノ酸という分類に区分されます。ロイシンには次のような働きがあります。
(1)筋肉の分解を抑える
分岐鎖アミノ酸は筋線維の代謝に深く関わりますが、とくにロイシンはたんぱく質の分解を抑えるのに働きます。たんぱく質の分解が抑えられるということは、たんぱく質で構成されている筋肉の分解も抑えられることを意味します。
(2)運動時の筋肉の働きを助ける
運動時に筋肉が働くには、エネルギー源である糖質が筋細胞に取り込まれる必要があります。そして、そのためにはエネルギー代謝に関わる「インスリン」の働きが必要になります。ロイシンはこのインスリンの分泌を促すため、運動前や運動時にロイシンを摂取することで、運動中の筋肉の働きが促されます。
(3)運動後の筋肉の修復や成長を促す
運動後の筋肉の修復や成長を促すためにも、(2)と同じようにインスリンの働きが必要になります。そのため、とくに運動後や睡眠前にロイシンを摂取すると、筋肉の修復や成長が促されます。
このように、ロイシンは筋肉の働きの維持増進には欠かすことのできない栄養素です。このほか、肝機能を高め、疲労回復や二日酔い予防にも働きます。
3.ロイシンが不足するとどうなる?
必須アミノ酸であるロイシンが不足すると、短期的には、筋肉量の低下促進、エネルギー源が効率的に運ばれないことによる運動時のパフォーマンス低下、筋疲労の修復遅延による疲労感などが起こります。
また、慢性的に不足すると、筋肉の分解が促進されるため、筋力の低下、肌荒れ、脱毛、腎機能の低下、肝機能の低下による倦怠感などの影響を及ぼす可能性があります。
4.ロイシンと筋トレの関係性
筋肉量アップというと、運動の中でも筋トレが効果的です。筋トレを行う際には、ふだん以上に筋肉の代謝が促されるので、ロイシンを積極的に摂ることが必要です。
「筋トレといえば、プロテイン」という認識がある方は多いかもしれません。プロテインはアミノ酸の分解前の物質です。
プロテインを摂取すると、体内で分解が進み、ロイシンができて、筋肉の代謝に働きます。つまり、摂取する段階でロイシンの形で摂取した方が吸収は速く、筋肉に働くまでの時間も速くなります。
5.ロイシンの摂取量の目安と多く含む食品
★摂取量の目安★
規則正しい食生活をしていれば、ロイシンが不足することはほとんどありません。ロイシンの必要量は運動量や筋肉量によっても異なるため、一概に適切な量を定めることが難しいのですが、厚生労働省の「食事摂取基準2015」では、ロイシンの必要摂取量は1日あたり体重1kgに対して39mgとされています。つまり、体重が60kgであれば、1日2340mgの摂取が必要となります。
★ロイシンを多く含む食品★
ロイシンは肉類や魚介類に多く含まれます。ロイシンを多く含む食品の代表例と含有量は次のとおりです(日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)。

牛ヒレ肉(100g) 1700mg
牛カルビ(100g) 890mg
豚ヒレ (100g) 1800mg
鶏むね肉(100g) 1600mg
まぐろ (100g) 1600mg
かつお (100g) 1800mg
あじ (100g) 1500mg
木綿豆腐(2分の1丁) 740mg
納豆 (1パック)520mg
卵 (1個) 500mg
これを見ると、動物性食品に多く含まれることがわかります。
また最近では、ロイシンを含んだスポーツ飲料やサプリメントも販売されています。
6.ロイシンを効果的に摂取する方法
ロイシンは摂取後30分で血液中を流れる量が最大になり、2時間後には元に戻ります。筋肉の代謝は常に行われています。そのため、1日3回の食事と、運動前後や就寝前などのタイミングで小分けにして摂取すると効率良く体内での働きを期待できます。
とくに朝食は1日の活動のエネルギー補給の時間で十分を心がけたい時間です。とはいえ、食欲がない、手間がかけられないなどの理由でロイシンが多く含まれる食材を使ったメニューを揃えるのが難しいときもあるでしょう。そのような場合には、サプリメントなどで補うのも良いでしょう。
ただし、アミノ酸はそれぞれ相互作用があることから、ロイシン以外のアミノ酸も摂取できる肉や魚、大豆製品、卵などを摂り、それに加えて、食事で取り入れられない時や運動時や就寝前にサプリメントなどを活用すると良いでしょう。
7.ロイシンを摂りすぎるとどうなる?
ロイシンを過剰摂取すると、悪心や肝機能の低下による倦怠感などの症状が出ることが報告されています。
ただし、ロイシンの体内利用効率は個人差が大きく、どの程度摂取すると影響が出るのかはわかっていません。
必要摂取量を基本に、運動量が多い場合には摂取量を増やしながら、摂取後の体調にも注意するようにしましょう。サプリメントなどで摂る場合には用法用量を守りましょう。
8.まとめ
加齢による筋肉量の低下を完全に止めることはできませんが、運動やロイシンをはじめとする栄養素の補給によって、筋肉量が減るスピードを遅くすることができます。
食事での摂取を基本としつつ、必要に応じてサプリメントなども活用しながら、効率的に筋肉量の増加を目指しましょう。
以上、"加齢に負けない!筋肉量アップの効果を高めるために摂りたい「ロイシン」” でした!