保健師が解説【胃が痛い!】その原因と対処法

この記事の執筆専門家
保健師 吉村佑奈 (株式会社とらうべ)
株式会社 とらうべ 社員。つい先日まで、病院で看護をしていて、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当。
※本記事は、保健師の方に執筆いただいたものを健康チョキンにて編集しております。
1. はじめに
キリキリと胃が痛い…胃が痛くて吐き気がする…
毎日忙しい日々を過ごす方の多くは、このような胃の痛みを経験したことがあるのではないでしょうか。
仕方がないと放っておいてはいませんか?
痛みに耐えるのは辛いものですし、放っておくと重大な病気にもなりかねません。
その原因と対処法、予防法を解説します。
2. どうして胃が痛くなるの?
胃の中は、食物の消化や食物と一緒に体内に取り込まれた菌などを殺菌するために、胃酸という強力な酸があります。
胃は、自身が胃酸に直接触れて溶けてしまわないように、粘液により自身の内側に膜を作り守っています。
粘液と胃酸のバランスがくずれ、胃酸が多量に分泌されると「胃酸過多」状態になります。
胃酸過多になると、食べものが入っていない空腹のときでも胃酸が出て、胃粘膜を傷つけて胃痛の原因となります。
3. 胃が痛くなる原因ってなに?
胃が痛くなる原因として、食べ過ぎや飲み過ぎやストレス、病気によるものなどがあります。
ここではその原因について説明します。
(1)ストレス

胃液の分泌は自律神経と深く関わっています。
通常、自律神経で、交感神経(戦闘モード)と副交感神経(休息モード)の2つがバランスを保ちながら身体の働きが円滑に行われていますが、過度なストレスがかかると、交感神経が優位になり、身体が常に戦闘モードの状態になります。
胃も働きを強めようと胃酸を必要以上に分泌してしまいます。
胃壁を守る粘液が胃酸の攻撃に耐えきれず、胃炎や胃潰瘍などの炎症が起きてしまうのです。
空腹時などにキリキリ、シクシクと痛みます。
(2)暴飲暴食

入ってきた内容物を胃酸と混ぜ、さらにその先に送るために胃の筋肉が弛緩を繰り返します。
暴飲暴食によりその働きが過度になると、痙攣を起こし、キューッと刺すような痛みとなり、さらに吐き気などを伴うこともあります。
暴飲暴食は消化に時間がかかるために、胃酸が通常より多く分泌されます。
このような食生活が続くと、ストレスと同様に粘液と胃酸のバランスが崩れ、炎症を起こしてしまうこともあります。
ダラダラと食べることが習慣になると、胃液が出続けることになり、胃酸過多になりやすくなります。
(3)刺激物

熱いもの、冷たいもの、辛いものなどは物理的な刺激となり、胃の筋肉を痙攣させやすくなります。
それによってキューっと刺すような痛みを引き起こします。
塩辛いものを多く摂ると、塩分濃度を調整するために粘液の水分が引き抜かれて、胃壁の防衛能力が低下してしまい、傷ついたり炎症を起こしたりしやすくなってしまいます。
(4)ピロリ菌

ピロリ菌は胃に住みつく細菌です。
アンモニアを発生させることで強い酸性の環境下でも生きることができ、そのアンモニアにより胃粘膜の層を薄くすることがわかっています。
ピロリ菌に感染したからといって、必ずしも痛みや病気につながるわけではありませんが、胃の中の環境を悪くすることで様々な悪影響を起こしやすくなります。
(5)薬の影響

薬によって胃痛が起こる場合があります。
その原因は2つあります。
薬の成分によるもの
「非ステロイド性抗炎症薬」である解熱鎮痛薬は、特定の酵素の働きを抑えて、痛みのもととなる「プロスタグランジン」の合成を抑えます。
プロスタグランジンは胃粘液の合成にも関わっているため、胃粘液が減少しやすくなってしまうのです。
処方の場合、非ステロイド性抗炎症薬は胃薬が一緒に出されることが多いですが、市販品もあり、飲んだ後の体調の変化には注意が必要です。
空腹時の服用によるもの
空腹時に薬を飲むことで、食べ物と認識して胃酸を分泌させてしまいます。
(6)病気
病気の症状として胃痛が起こる場合があります。
胃痛が症状の代表的な病気を紹介します。
●胃炎
胃の粘膜に炎症が起きた状態をいいます。
食べ過ぎ・飲みすぎ、ストレス、生活習慣、ウイルス、などにより起こりますが、ピロリ菌の関与が原因の8割を占めています。
胃炎には、大きく分けて以下の2種類があります。

○急性胃炎
・みぞおち辺りが突然キリキリと痛む。
・吐き気、下痢、吐血、下血を起こすこともある。
・安静にしていれば、2~3日で治る。

○慢性胃炎
・胃の粘膜の炎症が繰り返し起こり、治りにくくなっている状態。
・胃痛以外に胃もたれ、胸やけ、腹部膨満感、吐き気、ゲップなどが繰り返し起こる。
●胃潰瘍
ピロリ菌やストレス、薬剤の副作用などにより胃粘膜に傷ができ、胃壁も消化してしまいます。
食事中から食後に、みぞおち周辺がズキズキと重く痛みます。
その他胃もたれ、胸やけなどを起こします。
これまでに挙げた生活習慣に原因が見られない、もしくは下記のように生活習慣を見直しても改善がない場合には内科や消化器科を受診しましょう。
4. 胃痛になる前にできる予防って?
胃が痛くなる原因がわかったところで、胃が痛くなる前に心がけたいことを紹介します。
あなたの胃痛の原因に適切にアプローチして、症状を事前に防ぎましょう。
(1)ストレスの緩和

ストレスは誰でも感じるものです。
自律神経を乱してしまうほど過度に溜め込む前に、ストレスを解消するクセを付けておくことが大切です。
スポーツや映画鑑賞など、趣味の時間をとり、オンオフをつけるようにしましょう。
何か没頭することがあるといいですね。
また、毎日の生活リズムの中で、食事や入浴など、副交感神経(休息モード)が優位になる時間をじゅうぶんに確保しましょう。
仕事中でも定期的に休憩時間を決め、息抜きの時間を作りましょう。
(2)暴飲暴食を控える
暴飲暴食を控えることが大切ですが、お付き合いや飲み会などで、やむを得ず食べる量や飲む量が多くなることもありますよね。
そのようなときには、以下のような対策を取りましょう。
- よく噛んで胃での消化を助ける
- 熱いもの、冷たいものは温度を調節して食べる
- 暴飲暴食が続かないようにする
1回の食事で調整が難しい時には、前述の消化の良いものを摂るようにしましょう。
また、ダラダラ食べが習慣の場合には、食事時間を決めるようにしましょう。
(3)刺激物を避ける

熱すぎ、冷たすぎ、辛すぎなど、極端な刺激はできるだけ避けましょう。
刺激の強いものを食べるときには、空腹時は避け、食事の終盤に持ってくると多少負担を軽減できます。
(4)ピロリ菌除去

ピロリ菌は保険適用で薬により除菌することができます。
胃の不調で受診をする場合には、ピロリ菌の除去ができる内科や消化器科を受診するといいでしょう。
薬を1週間服用し、その後1 カ月以上経過して除菌判定試験を行います。
もし除菌ができていない場合には、再度除菌を行います。
再度除菌する場合には1回のみ保険適用が認められています。
なお、1週間の除菌期間はお酒を飲むことができませんので、飲み会などがある期間は避けましょう。
(5) 薬の飲み方に気を付ける
薬には「食前」「食後」など食事とのタイミングが記載されています。
その指示通りに飲むようにしましょう。
痛み止めによる胃痛が考えられる場合には、ドラッグストアの薬剤師や登録販売士に相談したり、受診をして胃薬と一緒に処方をしてもらうのもひとつの手です。
(6) 病気の治療
病気が原因で胃の痛みがあるときは、根源となっている病気をいち早く治しましょう。
●胃炎

○急性胃炎
・白湯のみで水分補給をし、1~2食は、食事を抜いて胃を休める。
・アルコールや刺激物は避ける。
症状が軽くなり食べられるようになったら、お粥、うどんなどの柔らかい食事からスタートし、だんだんと普通の食事に戻していく。

○慢性胃炎
・基本的には、薬の服用で治す。
・自己判断で薬の服用を止めると再発することがある。
・薬だけでなく、胃に負担をかけない食生活、規則正しい生活が大切。
・胃潰瘍
胃酸を抑える薬や、食事療法で治療をしましょう。
胃に穴があいてしまっているときは、手術が必要です。
また、ピロリ菌感染の場合は、除菌が必須となります。
5. 胃が痛いときの対処法は?
胃の痛みが起こったときに気を付けることを押さえておきましょう。
(1)胃薬の服用
胃薬は作用の違いでいくつかの種類があります。
- 胃酸の分泌を抑える
- 胃酸を中和させる
- 胃の粘膜を保護する
- 胃の痙攣を和らげる
- 消化を助ける
自分の胃痛の症状に合わせて選ぶことが大切です。
まずは自分の胃痛の原因を知り、それに応じて選択をしましょう。
迷うときには、総合胃腸薬を選ぶか、薬剤師や登録販売士に相談してみましょう。
その際には、胃痛以外の症状、どのような痛みか、痛みが起こるタイミングなどを伝えましょう。
(2)食事は消化に良いものを
痛みが激しく、食事をするのがつらいときには、白湯を飲んだり、体を冷やさないようにしてください。
食事を摂るときにはできるだけ胃に負担をかけないよう、以下のような消化に良いものを食べましょう。

○消化の良いもの

油の少ない料理、うどん、白いご飯、野菜スープ、味噌汁、果物、ヨーグルト など
(3)右側を下にして横になる

暴飲暴食による痛みに対して効果的な方法で、右側を下にすることで食べ物の移動を助けます。
ただし、暴飲暴食後に横になると胃酸の逆流にもつながるため、上半身を高くして横になりましょう。
6. 最後に
胃の痛みには様々な原因があり、それに応じて対策が異なります。
まずは、どのような痛みか、痛むタイミングか、ほかに症状はあるかを確認し、生活で考えられる原因を改善してみましょう。
※この記事を執筆いただいた専門家の方
執筆:保健師 吉村佑奈
株式会社 とらうべ 社員。つい先日まで、病院で看護をしていて、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当。
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